ゴミ山と夢
アジアに暮らす貧しい少年の物語です。 yoshifuji masaki
ママに読んでほしい童話
吉藤 まさき
ある国の、大きな町の物語です。
その町のはずれには、ゴミが山のように積み上げられている、広い場所がありました。
そこへ、町のゴミをいっぱい積んだトラックが近づいてきました。
トラックが止まり、朝に集めたゴミを下ろしはじめると、子供たちがたくさん集まってきました。
手には、小さな棒と、ゴミを入れる大きな袋を持っています。
ゴミの山に最初に近づいた、赤い帽子かぶった男の子がポポロです。
ポポロは、ゴミの中から、ひろった空き缶や、紙くずを売るのが仕事です。
ゴミの中には、危ないガラスや、汚れたものもありますが、それを嫌がってっていると、生きていかれません。
新しいゴミの中には、高く売れるものがあるかもしれないのです。
子供たちは、少しでも早くゴミの山に近づこうと競争で近づいて行きました。
ポポロが、がんばって探していると、見かけないおじいさんが、困った顔で、ゴミの山を見上げていました。
そして、よろよろとゴミの山にのぼり、何かを探し始めました。
ポポロがおじいさんに聞くと、おじいさんは、大切な書類を、ゴミと一緒にすててしまい、探しにきたとのことでした。
そして、そのゴミは、ここらにすてたと、トラックの運転手さんに言われたそうです。
「おじいさん、ぼく、手伝ってあげるよ」
「ありがとう、書類は青い袋に入っているはずなんじゃ。ほんとに助かるよ」
ポポロは、棒を使い、ゴミをどんどん掘り起こしていきました。
「あ、痛い！」
ポポロの、穴だらけになった手袋の指先から、血が流れています。
手のけがは、いつものことでした。
ポポロは傷口を、布きれでしめると、また探し続けました。
「おじいさん。この袋は違う？」
「ううん、ちがうな」
お日さまが、真上に上がったころでした。
「おじいさん、この袋？」
「おお、それじゃ、それじゃ、ありがとうな。これは、少ないがお礼の金じゃ」
「いいよ、ぼく、お母さんに、困っている人からお金をもらったら、しかられるから」
「うん、そうか。じゃあ、名前は？」
「ポポロてんだ。あ、大変だ。学校いかなくちゃ。おじいさん、さようなら」
ポポロは、走って学校へ行きました。
ポポロは、学校が大好きなので、お母さんに昼から、行かせもらっていました。
学校が終わり、家に帰ると、お母さんの手伝いが待っています。
お母さんは、白内障と言う目の病気で、あまりよく見えないからです。
「母さんごめん、今日はお金がないんだ」
ポポロは、ゴミ山で会った、おじいさんとのことを話しました。
「いいんだよ。人を助けるってね、人間しか出来ない、大切なことなんだよ。また、明日がんばりなさい」
次に日、ポポロは、いつもより早く起きて、
ゴミの山で、働きました。
その日はがんばったので、お米を少し買うことができました。
前の日は、野菜とスープだけの食事でしたが、今日は、お米を食べられます。
ポポロは、お腹がすいてぺこぺこでした
「お母さん。やっぱり、お米はおいしいね」
ポポロは、口いっぱいにご飯をほおおばりながら言いました。
「そうかい、ポポロ、よかったね」
お母さんが、笑顔でうなずきながらこたえました。
それから、一年たったある日のことです。
ポポロが、家に帰っていると、周りのぼろ小屋に似合わない、立派な車が家の前にとまっていました。
家に入ると、ゴミ山で会ったあのおじいさんがいました。
「やあ、やっと君と会えたよ。どうしてもお礼を言いたくてな、わしは、あの書類のおかげで、どうにか商売がうまくいつたんだ」
その頃には、お母さんの目はほとんど見えなくなり杖をついて、歩いていました。
そんなお母さんを見て、おじいさんが、心配そうに言いました。
「ポポロ君。白内障は、今ではすぐ治る病気じゃ、あの時のお礼に、失礼と思うが、儂に病院の治療費をださせてくれないかい」
「ありがとう。お願いします」
ポポロは、おじいさんの車に乗せてもらい、お母さんを、病院に連れて行きました。
目の手術は、入院して、３日後におこなわれ、おじいさん言ったとおり数十分で、すぐに終わりました。
そして、次の日。目に巻かれた包帯を外す時がきました。
先生が包帯をはずし、お母さんが目をそっとひらきました。
「見える、ポポロが、笑っているのが、よーく、見える」
お母さんは、ポポロを見て、につこり笑いました。
「お母さん、すごい、治ったの、目が、目が見えるんだよね。よかったー」
「ポポロありがとう。母さんは、これから、うんと働くから、、ポポロの好きなだけ学校へ行ってもいいんだよ」
ポポロは、お母さんの胸にとびこみました。
ポポロに、夢が出来ました。
人を助ける、お医者さんになる夢です。
ポポロは、そのために、今、いっしょうけんめい勉強しているそうです。