　よくはれた　なつのひのことです。
　おおきなやまの　てつぺんにすんでいる　そらの　くもをつくっている　やまぼうずがいいました。
　「おい、こぼうずたち。きょうは、おひさまの　ごきげんがいいようだ。さあ、うみで　くもをつくっている、うみぼうずにまけないように、どんどんくもを　つくってくれよ」
　やまのきのはっぱや、くさのうえには、やまのこぼうずたちが、つちのなかからすいあげたみずを　くちいっぱいにふくらまして、おひさまのひかりで　かおをまっかにして、いまにも　くもを　ふきだしそうに　しています。
　「それ、くもをつくるぞ、ドンドコドン！」
　やまぼうずの、おおきなこえが　やまから　ひびきわたりました。
　「へーい」
　やまのこぼうずたちは、やまぼうずのあいずで、みんないっしょに　くちからくもをはきだしました。

　プクプク　ハーハープクプク　ハーハー
　みどりいっぱいの　なつのやまから、あおいそらにむかって　どんどんくもがのぼっていきました。
　うみのうえで、のんびりと　ひるねをしていた、うみぼうずが、やまからたちあがってくるくもをみつけました。
　「あらら、これはたいへんだ。やまぼうずが、くもをつくりはじめたぞ。これは　まけてはいられんぞ」
　なみのうえには、　ちいさな　うみのこぼうずたちが、うみのみずをいっぱいすって、おひさまのひかりをあびた　まっかになったほっぺたを　おおきくふくらましています。
　うみぼうずは、いそいで　うみのこぼうずたちに　こえをかけました。
　「よーし、やまぼうずにまけないよう、どんどんくもを　つくってくれよ。そーれ、くもをつくるぞ、ドンドンガララ！」
　うみぼうずのあいずで、うみのこぼうずたちも　そらにむかって、いっせいに　くもをふきだしました。

　ププププ　ハハハ　ププププ　ハハハ
　うみからも、あおいそらにむかって、どんどんくもが　あがりはじめました。
　「やや、うみぼうずめが、くもをつくりはじめたようだ。こぼうずたち、がんばって　くもをつくるぞ。それ、ドンドコドン！ドンドコドン！」
やまのこぼうずたちは　がんばって
　プクプク　ハーハー　プクプクハーハー
　「おお、やまぼうずのくもが　おおきくなったぞ。これは　まけてはいられんぞ。　みんなまけるな、そら　ドンガララ！ドンガララ！」
　うみのこぼうずたちも　まけないぞ　がんばって
　ププププ　ハハハ　ププププ　ハハハ
　ドンドコドン！
　プクプフ、ハーハー
　ドンドンガララ！
　ププププ、ハハハ
　こぼうずたちのつくったくもは、どんどんおおきくなっていき、とうとう、そらのてっぺんに　とどきそうな　おおきな　にゅうどうぐもになりました。
　どうやら、きょうは、やまぼうずのくものほうが、そらのてっぺんに　はやくとどいたようです。
　「ははははは！おれさまの　かちだな、ドンドコドン！」
　やまぼうずは、おおよろこびでいいました。
　「ざんねん。おれさまは、ひるねをしていたから、しかたないな　ドンドンガララ！」
　うみぼうずは、くやしそうにいいました。
　やまぼうずと、うみぼうずのせいくらべがおわると、おおきなくもは、あめになって、なつのあつい　だいちと　うみに　もどっていきました。
　だいちに　いきている、くさや、きや、どうぶつたちは、やまぼうずとうみぼうずのせいくらべのおかげで、あつい　なつのひは、あめをふらしてもらえて、おおよろこびでした。

　そんな　あるひのことです。
　うみぼうずのところへ　くじらくんがたずねてきました。
　「うみぼうずさん。ちかごろ、さかなさんたちが、うみのみずが　くさくてこまっているそうです。さかなさんたちは、あめのみずが　よごれているからだといっていますが、どうなのでしょう？」
　「なになに、よごれたあめだって。わしのふらす　あめには、よごれたあめなどないはずじゃ。よし、それでは、やまぼうずのところへいって、きいてみることにしよう」
　うみぼうずは、おおきなくもにのると、やまぼうずのすんでいる、
おおきなやまに、たずねていきました。

　「おーい、やまぼうずくん」
　「やあ、どうしたんだ、うみぼうずくん」
　「それがだなあ、くじらくんがたずねてきて。ちかごろ、うみのみずがよごれているのは、おれたちの　あめのせいかと　きかれたんだが、きみは　わかるかい？」
　やまぼうずは、すこしかんがえると、
　「ははーん。それは、にんげんがつくる　くものせいだよ。そら、あそこにみえる、こうじょうのエントツからでている、あのくものせいだよ」
　うみぼうずと、やまぼうずは、どうすればいいか　そうだんしました。
　そして、きれいなあめを　どんどんふらせれば、うみのみずも、やまのみずもきれいになるにちがいない　とかんがえました。
　ふたりは、もっとみずがよごれたら、とてつもない　そらいちめんにひろがる　おおきなくもをつくって、おおあめをふらす　じゅんびをしているそうです。
　

　おおあめを　ふらせないために、みずをよごさないようにしなくてはいけませんね。
　