大きな玉子

　　　　　　　この童話は、環境保護団体（ＮＧＯ）谷口さんの尽力で発刊されされた作品です。
　　　　　　　この作品は、中国放送のラジオ番組で放送され、ＣＤに製作されました。
　　　　　　　ＣＤは、広島の公営図書館等に寄付され、他は視聴者にプレゼントされました。
　　　　　　　絵本は、１、000円で販売されましたが現在残っていません。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　作　　　吉藤　まさき

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むかし地球は、風の音や、波の音しか聞こえない、静かな星でした。
それは、地球に動物たちが、住んでいなかったからでした。
よく晴れた、夏のことでした。
空に、ポッカリ浮かんだ、白い雲の間から。
まわりのどんな雲よりも大きい、とてつもない大きい白い玉子が突然あらわれ、ゆっくりと、地上に降りてきました。
そして、しばらくすると、大きな玉子にひびが入りはじめ、二つにわれ、中から、動物たちの話し声が聞こえてきました。

動物たちは、
「こんなきれいな星に住めるなんて、なんて幸せなんだ」と話していました。
「それでは、みなさん、玉子から降りてください」
動物たちの中で一番かしこいリーダーの人間が言うと、動物たちは、玉子の中から、ぞろぞろと降りてきました。
「みなさん、この星のどんな所で暮らしてもいいですが、今から言うことだけは守ってください。この星は大きくて、食べ物もたくさんありますし、きれいな水もたくさんあります。だけど、食べ物や水を、自分が食べられる以上は、よくばって集めないでください。そして、美しい緑の木々や草花を、大切にしてください。この2つをこの星に住むみんなのルールとします」
と、リーダーの人間が注意しました。
「はーい、わかりました」
動物たちは、いっせいに返事をすると、それぞれが、好きな所に、別れて行きました。
ペンギンさんは、暑いのがいやなので、寒い所にいくことにしました。
ぞうさんは、体が大きくて、よく食べるので、草や木のたくさん生えている、大草原に行くことにしました。
そのようにして、動物たちは、地球のいろいろな場所に住むようになりました。
動物たちは、こんな美しい地球に住めて、とても幸せでした。



ところが、しばらくすると、人間は、ほかの動物たちと違ったことを始めました
道具という便利のものを作りだしたのでした。
動物たちは、「ああ、やっぱり、人間さんは、とてもかしこい、立派なリーダーだ」と、人間をほこりに思いました。
そんなある日のことでした。
熊さんが森を歩いていると、人間たちが、木をたくさん切り倒している所に出会いました。
「人間さん、何をしているんですか？」
熊さんが聞きました。
「やあ、熊さん。今ね、オノという道具を使って、木を切っているんだよ。これを使うとね、どんどん木を切り倒せるんだ」
自慢そうに人間が答えました。
「でも、人間さん。あなたの作ったルールでは、緑の木々を大切にしようと、言ってはいませんでしたか」
熊さんは少し不機嫌に言いました。
「たしかに、そう言いましたが、少しぐらいだったら、いいんじゃないですか」
人間は平気な顔で答えました。
「でも、それはルール違反ですよ」熊さんは、人間に注意しました。
「じゃあ、熊さん。ルールは私たちが作ったのですから、このルールは、変えることにします」
と言って、人間は、自分たちの都合のいいようにルールを変えてしまいました。
熊さんは、「これは大変だ！」と動物たちを集めて、このことについて話し合いをしました。
話し合いの結果、もう、人間とは、二度と口をきかないことにしました。
動物たちと人間が、口をきかなって、長ーい長ーい時がたちました。
それからは,地球のほとんどを、よくばりな人間たちが、ひとりじめするようになりました。
そして、たくさんの緑の木を切ったり、きれいな海や川を、自分たちのゴミで汚してしまいました。
動物たちは、また、話し合いをしました。そして、こんな汚れた地球には、もう住みたくないので、この星から出て行くことにしました。
動物たちは、今、人間たちの知らない、森の奥の秘密の場所で、大きな玉子をつくり始めているそうです。
でも、この玉子には、人間を乗せる場所はないそうです。
ただ、人間の友だちの、犬君と猫さんだけは、人間の中にも、いい人がいるから、連れて行ってあげようと、言ってくれているそうです。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 おわり

作品の個人又は教育教材以外での無断使用を禁じます。