アフリカの ドンガ川の上に お日さまがギラギラとかがやいています。
川の中では 大きなお父さんカバと 小さなカバの子供が泳いでいます。
子供の名前は ジャンボという男の子です。
今日は 川の中に もぐるけいこです。
「ジャンボ、川の中では、歩くようにもぐるんだよ」
「はい、お父さん」
ブクブクボコボコ。
ジャンボくんは 川の中に頭をしずめ もぐりました。
「ハハハ、ジャンボ。おしりがまだ川の中に入ってないよ」
やさしいお父さんは 少しジャンボくんのおしりをおして 助けてあげました。
アブアブ ザブ ザブー。
ジャンボくんは がんばって前足をかいだので やっともぐれました。
「よーし、うまくもぐれたな。今日のけいこは、これでおしまい。夜のごはんまで、遊んでいいよ」
「はーい、お父さん」
ジャンボくんは そういうと、お母さんと妹のリオちゃんのところまで 水しぶきをあげ 走って行きました。
「リオ、今日は、おさかなをおっかけてあそぼう」
「うん、お兄ちゃん」
お日さまが 西の山にしずみ。お月さまが出てきました。
「さあ、夜のごはんだぞ」
「はーい」
お父さんが声をかけると みんな川から りくに上がり 草を食べはじめました。
カバさんは 草が大好きです。でも カバさんは お日さまが にがてなので昼の間には 食べれません。
そんな ある日のことです。同じ川でくらしている ワニさんが 声をかけてきました。
「カバのお父さん。なんだか、ちかごろ、川の中がせまくなったとおもいませんかワニ？」
「そうですね。雨があまりふらないからですかね。草もどんどん少なくなっていますよ」
「そうです。このまま水がなくなってしまうと、わたしたちは、ここにはすめなくなりますねワニ」
ワニさんは しんぱいそうに話ました。
「うーん、こまりました。でも、一ついい方法があります。わたしのオジイさんに教えてもらった、雨ごいダンスをやってみましょう。もしかしたら、雨がふるかもしれません」
カバさんとワニさんは 雨ごいダンスをすることにしました。
カバさんは 大きなお口を空にむけると お口をひらいて
「雨、雨、ふれふれ、カッパカバカバ、カーバカバ」
ワニさんも 大きなお口を空にむけると お口をひらいて
「雨，雨、ふれふれ、ワーニワニワニ、ワーニワニ」
カバさんとワニさんは 何日も雨ごいダンスをしましたが 雨はふりません。
川の水は どんどん少なくなり とうとうカバさんの 足の高さまでになりました。
これでは 川の中に もぐることはできません。
「こまったなあ、これじゃあ、もうここにはすめないよ」
カバのお父さんは お母さんに話しました。
「そうですね、食べものの草も、どんどん少なくなるし、どうしましょう？」
その話を いつも カバさんの背中にのっている 小鳥が聞いていました。
チチチチー
「カバさん。お日さまがしずむ山の下には、水のたくさんある川がながれていますよ。歩けば、一日くらいですよ」
「一日といっても、ぼくらは、お日さまが出ている時はあまり歩けないんだ。長く歩いていると、やけどをしてしまうんだ。でも、ありがとう小鳥さん。みんなと、そうだんしてみます」
カバさんは かぞくでそうだんしました。そして つぎの満月の明るい夜に ワニさんといっしょに ひっこしをすることにしました。
ギラギラお日さまがしずみ。まん丸いお月さまが 見えてきました。
さあ カバさんたちのひっこしです。お日さまの出る前に むこうの川につかなければいけません。
「じゃあ、みんな。ガンバって歩くんだぞ」
「はーい」
ジャンボとリオ お母さんも 元気にへんじをしました。
「ワニさんも、だいじょうぶですか、しゅっぱつしますよ」
「だいじょうぶ、ワニワニ」
「では、しゅっぱつ」
カバさんたちと ワニさんは 川から出ると お日さまのしずんだ山をめざしました。
カバさんは りくではじょうずに歩けるのですが ワニさんはうまく歩けません。
カバさんが 短い足でトコトコ歩くと
わにさんが 大きなシッポをふりながら フリフリズリズリ歩きます。
お月さまの光と お空にかがやく星のおかげで とても明るい夜です。
トコトコ トコトコ フリフリ ズリズリ
みんないそいで ひっこしです。
ドンガ川を 少しはなれると もうそこには 草も何もはえていない 大地がつづいていました。
カバさんが いそいで歩いて トコトコトントン
ワニさんも いそいで歩いて フリフリズリズリ
ワニさんは ガンバって歩きましたが どうしても カバさんのようには早く歩けません。
「ハア、ハア、ゼイゼイ、カバさん。少し休みましょうワニ」
「お日さまが出るまでに、つかなくてはいけないのですが、ワニさんは、もう歩けませんか？」
「はい、カバさん。ごめんなさいワニ」
「じゃあ、ここで少し休みましょう」
やさしいカバさんは ワニさんのために 何度も休みながら いそいで歩きました。
でも 何度も休んだので 空が白く明るくなりはじめました。
さあ、たいへんです。
チチチチー小鳥がしんぱいして とんできました。
「カバさん、あともう少しですよ。ガンバって」
とうとう お日さまが顔を出して 大地をてらしはじめました。
「お父さん、背中があついよ」
ジャンボくんの 背中が少し赤くなっています。
「ジャンボ、お父さんのおなかの下にかくれなさい」
「はい」
ジャンボとリオは お父さんとお母さんのおなかの下にかくれました。
お日さまが、とうとうギラギラかがやきはじめ カバのお父さんの背中も
赤くなりはじめました。
たいへんです このままでは 川につけないかもしれません。
「カバさん、ぼくたちのせいでおくれてしまって、ごめんなさい。カバさん、ぼくらワニは、お日さまには少しつよいですから、カバさんの、背中にのって、日よけになってあげますよワニ」
そういうと、ワニさんは カバさんの背中にのり 日よけになりました。
「ありがとう、ワニさん。これでもう少し歩けます」
チチチチー
「あともう少し、ガンバレ、ガンバレ」
大地のさきに 緑の草原が見えてきました。
水の においもしてきました。
「カバさん、あともう少しですよ。ほら、水のながれがる音が聞こえてきました。あっ、それに、川が、川が見えてきましたワニ」
ワニさんは カバさんの 背中からいいました。
「ほんとうだ、ぼくにも見えてきました。ありがとうワニさん。お母さん、ジャンボ，リオ、あともう少しだぞ」
「はーい、お父さん」
カバさんたちは 少し早く歩きはじめました。
お日さまにてらされて、水がキラキラとかがやいています。
そこには ドンガ川より少し大きな川が ながれていました。
「そーれ、とびこむぞ」
「わーい、やった」
「気もちいいな、ワーニ、ワニ」
カバさんと ワニさんは 水しぶきを上げながら 川にとびこみました。
チチチチー
「カバさん、よかったね」
「ありがとう、小鳥さん。ほんとうに助かりました」
次の日のことです。
カバさんとワニさんは さっそくこの川でも 雨ごいダンスをすることにしました。
小鳥さんの話では もう 近くには ひっこしする川がないというからです。
カバさんが お空にむかって 大きくお口をあけて
「雨、雨、ふれふれ、カッパカバカバ カーバカバ」
ワニさんも お空にむかって 大きくお口をあけて
「ワーニワニワニ ワーニワニ」
カバさんたちの 雨ごいダンスで 雨がふれば いいですね。
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