もんしろちょうの、もん子ちゃんが生まれたのは、ある山奥にある、おじいさんの、小さなキャベツ畑の中でした。
生まれたばかりの、小さな青むしのもん子ちゃんが、キャベツの葉っぱのてっぺんで、頭を上げると、春のあたたかいかい風がふいていました。
もん子ちゃんは、毎日、毎日、おいしいキヤベツの葉っぱを食べて、どんどん大きくなっていきました。
そんなある日のことでした。もん子ちゃんの住んでいるキャベツが、グラグラとゆれはじめました。
もん子ちゃんは、おどろいて、葉っぱのうらから、外をのぞいて見ました。
すると、そこには、キャベツをもぎとっている、おじいさんの、大きな手がありました。
「おお、おいしそうに育ったわい」
おじいさんは、そう言うと、キャベツを台所に運んで行きました。
もん子ちゃんは、こわくなって、いそいで葉っぱの中へかくれました。
おじいさんは、台所に行くと、キャベツを、水の入ったバケツにいれ、葉っぱについたどろを洗いはじめました。
もん子ちゃんは、水の中につかってしまい、おぼれそうになりました。
でも、おじいさんは、どろをおとすと、キャベツをきるために、すぐに、まないたの上に運んだので、おぼれずにすみました。
もん子ちゃんは、キャベツからにげ出すことにしました。
「あれ、青むしだ」
おじいさんは、葉っぱの先から、やっと頭を出した、もん子ちゃんを見つけました。
「おお、かわいそうに。いま、キャベツ畑にもどしてやるからな」
おじいさんは、もん子ちゃんを、やさしくつまみ上げました。
「大きくなって、きれいなちょうちょに、なるんだよ」
おじいさんは、そう言うと、もん子ちゃんを、そーっとキャベツ畑にもどしてやりました。
夏になりました。
もん子ちゃんは、もうすっかり大きくなって、おとなのもんしろちょうになっていました。
もん子ちゃんは、青い空の中を、かわいいつばさで、元気よくはばたいて、仲間のちょうたちと、楽しそうにとんでいました。
空から下を見ると、おじいさんが、やさしくほほえんで、畑の中から、もん子ちゃんを見上げていました。
もん子ちゃんは、空がとってもきれいだったので、どんどん高くとんでいきました。
その時です、とつぜん、つよい風がふいてきました。
風は、もん子ちゃんを、どんどん、高く、高く、運んで行きました。
もん子ちゃんは、力いっぱいはばたいて、下へおりようとしましたが、風がつよくて、どうにもなりません.
もん子ちゃんは、あきらめました。そして、風に運ばれるまま、どんどん遠いところへ、ながされていきました。
風が、少しよわくなりました。もん子ちゃんは、下へ、下へと、ゆっくりおりていきました。
下へおりていくと、そこには、これまで見たこともない、大きなビルがたくさんあり、車がたくさん走っていました。
もん子ちゃんは、のどがかわいたので、道路の水たまりにおりて、水をのみました。
ブブブーン！もん子ちゃんは、車にひかれそうになりました。
もん子ちゃんは、こわくなり、町のどこかに、キャベツ畑はないかとさがしましたが、なかなか見つかりません。
でも、町から少しはなれたところに、大きなキャベツ畑があるのを、やっと見っけました。
もん子ちゃんは、こんなに大きなキャベツ畑だから、きっと、仲間たちがたくさんいるにちがいないと、大よろこびで、畑におりていきました。
しかし、畑についてみると、もんしろちょうの仲間たちは、一ぴきもいませんでした。
そして、キャベツの葉っぱからは、とてもいやなにおいがしていました。
それは、もんしろちょうの大きらいな薬が、キャベツにかけてあったからです。
もん子ちゃんは、仲間たちが一ぴきもいないのは、このせいだとわかりました。
もん子ちゃんは、ひとりきりで、さびしくなり、仲間たちがすんでいる、キャベツ畑をさがそうと、空へ、どんどん高く、とんでいきました。
すると、また、とつぜん、つよい風がふいてきて、もん子ちゃんを、高く、高く、運んでいきました。
もん子ちゃんは、こんどは、二どめなので、どんなにはばたいても、どうにもならないと、知っていました。
もん子ちゃんは、風にながされるままに、どんどんながされていきました。
風が、すこし、よわくなりました。
もん子ちゃんは、下へ、下へと、ゆっくりおりていきました。
すると、下に、おじいさんの、小さなキャベツ畑が、見えてきました。
畑では、友だちが、たくさんとんでいます。
もん子ちゃんは、うれしくなって、いそいで畑におりていきました。
もん子ちゃんが、キャベツの葉っぱのてっぺんとまり、ひとやすみしていると、キャベツのとてもいいにおいがしてきました。
もん子ちゃんは、やさしいおじいさんの畑にもどれて、ほんとうによかったと思いました。
おわり
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